九州工業大学 大学院 工学府 物質工学専攻  マテリアル工学コース / 工学部 マテリアル工学科

エネルギー環境材料学研究室

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研究紹介

21世紀の科学技術の潮流

 20世紀に発展した量子力学は原子の構造を解明し、その後のトランジスターの発明やDNAの発見を通じて21世紀初頭の先端科学技術の潮流、すなわちIT、バイオ、ナノテクノロジー等々を生み出してきました。これらはムーアの法則に代表されるデバイスの微細化・高速化の流れに牽引されて、相互にフィードバックを与えながら急速に発展しています。そこでは、電子回路、遺伝子、物質・材料などのレベルにおける人工的な設計・改変・プログラムによって、それらの基本構成単位としてのビット、DNA、原子、分子を自在にあやつり、低コストで固有の機能を増大させ、さらに、かつてないような新機能や技術を創出しつつあります。

 一方、21世紀においては化石エネルギーの枯渇と環境破壊の危惧が急速に高まっており,エネルギーの生成、輸送、貯蔵、利用において、高効率で廃棄物を出さないクリーンな手法の実現や、化石エネルギーから再生可能エネルギーへの転換が急務となってきています。これら要請に対して、量子力学に端を発し,人工的な設計・改変・プログラムによって高効率化・低コスト化を実現するナノテクノロジーが,エネルギー分野に新たな道を切り開いていくものと期待されます。

高温超伝導体とナノテクノロジー

 1986年に発見された高温超伝導体は,77 Kにおいて電気抵抗がゼロになるマクロな量子効果を示す物質であり、量子力学を基本とするクリーンで高効率なエネルギー技術の基礎となりうるものです。近年ようやく、この物質を用いてkm級の線材を製造する技術が確立し、抵抗ゼロのまま大電流通電可能な材料が現れてきました。こうして、極めて低損失・低コストで、遠方の原子力発電・風力発電・太陽光発電などで生成したエネルギーを電力ケーブルで都市部まで送電したり、1000 m落差の揚水発電所に匹敵する高密度の電力エネルギーを長期間貯蔵したり、さらには銅を代替した高効率モーター等によって産業用機器を駆動したりといったことが実現可能となってきています。

 21世紀は石油に代わって,再生可能エネルギーや原子力エネルギーで生成されたクリーンな電気エネルギーの利用が主流になると予想されます。電気の有効活用には,抵抗ゼロの高温超伝導体は最適です。ここで,高温超伝導体の性能向上には,磁束量子と呼ばれる量子力学的な基本構成単位をナノテクノロジーによって制御することが大変重要となります。

エネルギー変換材料とナノテクノロジー

 枯渇が問題となっている化石エネルギーは基本的には19世紀の技術であり、今のところ量子力学に端を発する人工設計やプログラムの介入する余地はあまりありません。したがって低コストでクリーン・高効率・再生可能なエネルギーを得るためには、量子力学に立ち返り、新しい科学技術の創出が必要です。
 例えば、熱電変換材料はエネルギーの高効率利用において有望な材料です。地上には産業、通信、輸送、発電などに基づく多くの熱源があり、エネルギーは廃熱として大量に捨てられています。このような捨てられた低品位のエネルギーを回収し、高効率で電気に変換できれば有望なエネルギー源となります。ここでは,ナノテクノロジーによるフォノンの制御が大変重要となります。
 一方、太陽電池は光を電気に変換するもので、ナノテクノロジーによって飛躍的な高効率化、低コスト化が実現できれば、この無尽蔵の光エネルギーは再生可能エネルギーとしてさらに有力なものとなります。ここでは光子の効率的な電気への変換が大変重要です。

研究でめざすもの

 現在、エネルギーの高効率利用と同時に、クリーンで再生可能なエネルギーの創出が強く求められており、電磁気、熱、光の各種エネルギーを制御する材料デバイスへのナノテクノロジー適用の機運が高まっています。わたしたちは,ナノテクノロジーを適用して,エネルギー材料分野へ人工的な設計・改変・プログラムの手法を持ち込み,エネルギーの高効率利用や再生可能エネルギーの創出を可能とする新しいエネルギー変換材料の創出をめざしています。
 私たちの当面のターゲットは高温超伝導,熱電変換,そして太陽電池です。ここで制御すべき対象は構成単位量子である磁束量子、フォノン、そして光子です。将来的には蓄電池もターゲットです。そこではイオンが重要な構成単位となります。

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